■山本仏具店の仏像修理事業の始まり
山本仏具店は「古いものを大事にしたい」というお客様のご要望に応える為に以前から修理のお仕事を承って おりましたが、
寺院様が特に大切にお祀りされている仏像・仏具の修理により力を入れる為、2004年に台東区蔵前に修理工房を設営致しました。修理工房には 仏像修理を手掛ける石井幹男氏を招聘し、事業の柱として「仏像修理」に本腰を入れ始めました 。
石井氏は独立前、文化財指定の仏像修復の実績をもつ明古堂にて研鑽を積んでおり、仏像修理に関して然るべき知識と技術を
備えている専門家で、制作当初の造形・装飾の美しさを踏まえ、それらを保ちながら修理をおこなっていくことに長けております。
■仏像修理の監理・伝え手としての山本仏具店の仕事の進め方
山本仏具店は寺院関係のお客様と多くのお付き合いがあり、日頃から仏具全般のご相談を頂きやすいという立場を活かして、
寺院様の抱える古くからの仏像・仏具の修理のご案内をして参りました。古い仏像の修理のご依頼を頂いた際には、調査及び修理報告書・見積提出の他、仏像の専門家ではない寺院様や檀信徒様にも分かりやすい説明資料を用いて、伝わるようにご説明することを心掛けております。弊社が考える修理方針とお客様のご要望をすり合わせながら、修理方針を決定していきます。
仏像をお預かりする際には、山本仏具店や石井が適切な梱包を行ない、弊社車両に積載・固定のうえ、山本仏具店蔵前工房まで
お連れ致します。蔵前工房には倉庫も併設されており、大型の仏像もお預かりできる施設となっております。大型仏像の修理の際には、搬出入の他、修理作業中のちょっとした移動の際にも人手が必要となりますが、経験豊富な山本仏具店スタッフが石井氏の指導の元、作業補助を作業補助を行ない、安全に仏像を移動致しております。
修理開始後、寺院様や檀信徒様を工房にお招きし、ご見学を頂く機会も設けております。 修理開始前、特に解体前には、分からなかった仏像の状態・過去の記録の有無等をお伝えし、その後の修理方針の確認を行なう為です。そして、日頃から手を合わせてお参りされている御尊像がどのような過程を経て修理されていくのかを知って頂くことで、修理後もますます大切にお祀りして頂き
たい思いもあり、 こういった見学会を催しております。また、ご必要に応じて仏像に関する学者様・専門家様をお招きし、
より専門的な知見を踏まえたご監修 のもと、修理方針を決定していくこともございます。
より確かな修理方針の決定後、石井氏が修理作業を進めますが、錺金具の新調・新補部材の漆塗・御像の持つ巻子の修理等、
内容に応じて専門技術者と協同することもございます。協同者の選定にあたっては、山本仏具店の日頃の取引先のなかから、
「修理」により適切な技術者を選定します。
また、 監修頂く方から専門技術者をご紹介頂き、作業の一部を委託することもございます。山本仏具店は、寺院様のご意見、
異なる専門分野の技術者各々の意見、監修頂く先生方のご意見等、様々な立場の方のご意見を咀嚼し、最適と考えられる道筋を
つけて、修理を進めて参ります。修理後は、お寺へ仏像をお戻し、作業報告書を提出致します。修理によって分かった事実、この度の修理方法を寺院様にお伝えすることにより、ご理解を深めて頂くとともに、後世に伝えて頂けるよう努めます。
■山本仏具店が仏像修理事業によって目指す道
山本仏具店は、有名無名を問わず日本の寺院に伝わる古き良き 仏像・仏具工芸の修理を行ない、
良い状態で次の時代に残していくことで、日本の仏教文化を未来にわたって繋いでいくことを目標としております。
修理にあたっては、当事者である寺院の方に、修理前・修理過程において判明したそれらの状態・魅力を的確に分かりやすくご説明するだけではなく、お寺の檀信徒様・参拝者様だけではなく、お寺の檀信徒様・参拝者様を始め、お寺にご縁のあった方にもその魅力を知って頂けるように努めて参ります。そのようにして、仏像・仏具・工芸を修理するという仕事の価値も高め、修理に携わる人材を増やし、修理の技術修理に携わる人を増やし、修理の技術が継承され、次代に残せるようにして参ります。
【近年の主な修理実績】
【近年の主な修理実績（石井幹男氏の手がけた修理業務として）】
■2012年～2017年 茨城県古河市 市指定文化財 日蓮宗 本成寺 木造 三十番神像
■2016年 東京都目黒区 浄土宗 祐天寺 阿弥陀堂 須弥壇（監修：株式会社 目白漆芸文化財研究所）
■2017年 東京都江東区 区指定文化財 浄心寺 木造日朝上人像
■2019年～2020年 東京都目黒区 東京都庭園美術館 立礼机 （監修：株式会社 目白漆芸文化財研究所）
■2019年～2020年 千葉県山武市 真言宗 蓮台寺 木造 金剛力士像
■2022年～2023年 埼玉県加須市 県指定文化財 浄土宗 龍蔵寺 木造阿弥陀如来立像
（監修：林宏一先生 ・ 成城大学 岩佐光晴教授）
＊龍蔵寺阿弥陀如来立像の修理に関しては、山本仏具店は修理業者としてではなく、龍蔵寺改修事業委員会として参画し、
寺院の立場となって修理業者・教育委員会・監修者との折衝業務に勤める。