仏像修理・石井幹男と仏像修理に対する考え方

仏像修理 石井幹男 のご紹介

石井幹男は、主に仏像の修理・修復・御身拭い(洗浄)を行なう仏師です。

 自身の仏像修理の仕事を、「過去と未来をつなぐ架け橋」と捉え、
「大切な仏像を次世代へより良い形で伝えていくことは今を生きている私たちの使命」という信念のもと、仏像に真摯に向き合い、活動をしております。

 特に、「制作された当初の姿」に重きを置いた修理を得意としており、長い年月を経たことによって感じられる仏像の佇まいや風合いを保つ修理を行なうことができます。

 例えば、制作してから後の時代に行われた修理の際に、彩色が厚く塗り重ねられることによって表情や立体感が変わってしまっている仏像に対して、後から補修された彩色を丁寧に取り除いていき、制作当初の彩色を表面に露出させます。
残されている制作当初の古い彩色は、それ以上剥がれ落ちないようにする処置をします。

一方、既に剥がれ落ちてしまっている当初の彩色の箇所には、下地から丁寧に直した後で新しく彩色をおこない、古い彩色箇所に馴染むように敢えて古びた風合いに仕上げる古色修復を行ないます。

 真新しく全て塗り替えたお姿とはまた異なる魅力となりますが、このようにつくられた当初のお姿・長い年月を経たからこそ得られる佇まいや風合いに重きをおきたいと考えられるお客様には特にお勧めしたい修理方法です。

上記に述べた方法はほんの一例で、実際には仏像の状態を調査し、調査内容をお客様に報告した上で、お客様のご希望をお聴きしながら、修理・修復方法を決定して参りますので、仏像修理・修復のお客様には、お気軽にご相談頂けましたら幸いです。

仏師・石井幹男の考える仏像修理における課題と考え方

■仏像損傷の原因と問題点・修理修復において注意すべき点
①木の痩せと膠の劣化(経年変化)
②鼠害と虫害
③災害(地震や火災)による損傷
④鉄釘・鎹(かすがい):鉄は錆び、錆は木を腐らせる

修理により鉄釘が使われると、一時的に形状が保たれますが、年月が経過するにつれて鉄釘に錆が生じ、その錆が木を腐らせてしまう危険があります。その代償は計り知れないものです。
 その為、釘には鉄製ではなく、錆が生じにくい素材の釘(例えば真鍮釘・銅釘・ステンレス釘)を用いるようにしております。

⑤紙貼り:湿度により紙が収縮し、浮き上がってしまう。また害虫の温床となる。

木地のは矧ぎ目部分に紙を糊で貼ると、隙間がなくなり、下地が簡単に塗ることができるので、短期的には表面がきれいに仕上がります。
しかし、紙は湿気に弱く、また用いられている糊がでんぷん糊だと余計に虫の温床となりやすく、仏像修理に使われる素材としては問題があります。

⑥後補

制作当初から年月が経過し、後補(制作後に補う)となる修理をおこなった際に行なう意図的な削りによって、元の形を変えてしまう。後補の作業でおこなう紙貼りが原因で、表面の彩色や金箔の浮き上がりが生じてしまうこともある。

⑥後補(当初制作の後に補われる処置)
仏師・石井幹男の経歴
東京造形大学及び同研究科にて彫刻を専攻、卒業後には文化財修復工房で仏像修理・修復を学びました。技術を磨いて仏像修理の仕事に従事すると共に、仏像の歴史・文化について広く知識を広げてきました。独立後もその経験を活かし、文化財指定を受ける仏像修復の仕事にも数多く携わっております。また、仏像修理の他、欄間修理や木彫刻・木工芸の修理修復、仏像の製作も行なっております。

【近年の主な修理実績(石井幹男氏の手がけた修理業務として)】

■2012年~2017年 茨城県古河市 市指定文化財 日蓮宗 本成寺 木造 三十番神像
■2016年     東京都目黒区 浄土宗 祐天寺 阿弥陀堂 須弥壇(監修:株式会社 目白漆芸文化財研究所)
■2017年     東京都江東区 区指定文化財 浄心寺 木造日朝上人像
■2019年~2020年 東京都目黒区 東京都庭園美術館 立礼机 (監修:株式会社 目白漆芸文化財研究所)
■2019年~2020年 千葉県山武市 真言宗 蓮台寺 木造 金剛力士像
■2022年~2023年 埼玉県加須市 県指定文化財 浄土宗 龍蔵寺 木造阿弥陀如来立像
        (監修:林宏一先生 ・ 成城大学 岩佐光晴教授)
 *龍蔵寺阿弥陀如来立像の修理に関しては、山本仏具店は修理業者としてではなく、龍蔵寺改修事業委員会として参画し、
  寺院の立場となって修理業者・教育委員会・監修者との折衝業務に勤める。